Column

コラム

ええ加減、大人になりなさい

2025.08.26
内田 勇希

 セブンイレブンで朝ごはんの会計をしていると、小学生らしき男の子がレジに駆け寄ってきた。

 どうした、どうした?と思って少年の顔を見下ろすと、どうやらレジの奥の商品棚を覗き込んでいるらしく、その視線の先には、「本日発売!」という店員の手書きPOPが付けられたワンピースカードのパックが並べてあった。

 その新しいパックを目にするやいなや、少年の目が爛々と輝き出し、「新しいやつ、あったよオー!」といって、いま店内に入ってきたばかりの父親の元へと駆け戻っていった。

 私は会計を済ませるとそそくさとセブンイレブンを立ち去ったので、そのあとのことはよく分からないが、十中八九、父親はそのパックを少年に買ってやったはずである。

 ワンピースカードは発売から一瞬で売り切れることも少なくない人気商品なので、その少年にとってはこれ以上ない喜びであったに違いない。

 道すがら、私はその光景を脳裏に反芻しつつ、なんとなく決まりの悪い気持ちになってきた。

 というのも、私は今年で30歳を迎える歴とした成人男性であるというのに、金に物を言わせて、Amazonでまさにそのワンピースカードを大人買いしていたのである。

 私のような大の大人がそのような馬鹿げた買い方をするせいで、あれほどまでに目を輝かせて発売を待ち望んでいる子供たちが買いにくくなっているのではないかと思い至ったのだった。

 そういえば、つい先日、マクドナルドのハッピーセットにポケモンカードのおまけがついたことにより、転売ヤーたちが店に殺到し、本当に欲しがっているはずの子供たちにカードが行き渡らなかったといって、ネット上で炎上騒ぎになっていた。

 私自身の行いも、子供たちの楽しみを奪っているという意味では、本質的にその転売ヤーと変わらないはずだ……。

 私は申し訳なさとせつなさと心弱さとによって小さく身悶えし、実際のところ「ううあ゛あ゛あ゛!」とすこし唸った。

ええ加減、大人になりなさい、Mr.myself。